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札幌市東区の内科、消化器内科、糖尿病内科、小児科の病院

特定医療法人とこはる 東栄病院

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医学豆知識

肝臓専門医に聞く 肝臓Q&A


Q1.肝臓はどんな働きをしていますか?

肝臓は右上腹部の肋骨の下からみぞおちにかけて存在し、重さは約1400~1800gあります。横隔膜にくっついており、呼吸すると上下に大きく移動します。いくつかの靭帯で腹壁にも固定されています。

肝臓の主な働きとして以下のものがあります。

  1. 体に必要な物質を作る 腸から吸収されたアミノ酸などの物質から、人体に必要なタンパク質や脂質を作り出す。(例:アルブミン・凝固因子・コレステロールなど)
  2. 有害物質の解毒、胆汁の生成 血液中の不要物や薬物を処理(代謝)し、無毒化したり胆汁の中へ排出したりする。(例:アンモニア→尿素、薬物の代謝、ビリルビン代謝・排泄)
  3. 栄養分の貯蔵 消化管から吸収された糖分を、グリコゲンに変え蓄積したり、糖が必要な際にグリコゲンから糖を切り出して放出したりする。
Q2.健康診断で肝機能障害と言われましたが、どういうことですか?

健康診断で「肝機能障害」とされるのは、血液検査でのAST(GOT)、ALT(GPT)、ALP、γ-GTP、ビリルビンなどの値が上昇していることです。

AST(GOT)、ALT(GPT)の上昇は、肝細胞が現在壊れつつあること(肝細胞からの酵素の逸脱)を示しています。ALP、γ-GTP、ビリルビンの上昇は、胆管障害などの胆汁流出障害を示しています。

肝機能障害の原因にはいろいろ考えられます。アルコールや肥満が原因のこともありますが、肝炎ウイルスが肝機能障害を起こしている可能性もありますので、専門の医師による診察と検査が必要です。

少し本題から外れますが、一般的に使われている「肝機能障害」という言葉は、本来「肝障害」と表記すべきものです。「肝機能障害」は、肝臓の働きが異常のはずなので、それを示す指標は別にあるのです。

  • 例1:アルブミン・PT値(肝の蛋白合成能の指標)
  • 例2:アンモニア値(肝の代謝能の指標)
  • 例3:ビリルビン値(肝の代謝能の指標)
  • 例4:ICG(肝の薬物排出能の指標)
Q3.肝臓が悪くなるとどんな症状が出ますか?

急性肝炎では、皮膚や目が黄色くなる(黄疸)、尿の色が濃くなる、だるい、食欲がない、吐き気がする、などの症状がありますが、慢性肝炎では基本的に症状はありません。すすんだ肝硬変の場合は、だるい、食欲がない、むくむ、腹が張る、皮膚や目が黄色くなる(黄疸)、などの症状がみられます。

世間では、「肝臓が悪くなると疲れやすくなる」「肝臓が悪くなると皮膚に発疹が出る」などと言われることもあります。しかし、実際にはかなり進んだ肝臓病(肝硬変)でも無症状の場合がよくあります。ALT(GPT)の上昇の程度と、症状の有無の間にはそれほど関連がありませんし、肝疾患と皮膚の発疹はほとんど無関係です。

「肝臓が痛い」と訴えて来院する患者さんはいます。しかし、痛みを感じる神経は、肝臓の表面(肝被膜)にしかなく、肝臓の極端な腫れ・巨大な腫瘍による肝被膜の伸展以外では、痛みが出ることはありません。かなり巨大な肝癌(7cm程度)の人でも、無症状なことはよくあります。

進行した肝疾患(進んだ肝硬変)では、全身倦怠感・食欲不振・浮腫・腹水(による腹部膨満)・意識障害(肝性脳症)・貧血や吐血(食道胃静脈瘤・門脈圧亢進性胃症)などをきたします。しかし、症状の進行は年余にわたるため、患者さん本人にはあまり自覚がないことも多いです。

肝臓は「沈黙の臓器」です。肝臓病になってもよほど進行しないと症状はありませんし、ある程度病状が進行してしまうと、もう元には戻りません。ですから早めに病気を見つけるためには、症状が何もなくても、血液検査など、何らかの検査を受ける必要があります。

Q4.肝臓病はどのように進行しますか?

図のように肝臓病は放っておくと、急性肝炎→慢性肝炎→肝硬変→癌 と進行していく可能性があります。急性肝炎の多くはそのまま治りますが、B型肝炎の一部、C型肝炎のほとんど、禁酒のできないアルコール性肝障害の人は、慢性肝炎から肝硬変と進行していきます。しかし、薬剤による治療や禁酒で進行を止めることができますので、専門医の治療を受けてください。

Q5.脂肪肝は放っておいても大丈夫ですか?

肝細胞の中に脂肪(中性脂肪)が粒状にたまり、脂肪の粒が大きくなると細胞は死に至ります。死に至った細胞からAST(GOT)、ALT(GPT)などが放出されると健康診断などで検査値に異常が出ます。超音波検査を行うと、脂肪肝を簡単に発見できます。

アルコール性(過度の飲酒で発生する)と、非アルコール性の脂肪肝があります。

  • アルコール性脂肪肝
  • 飲酒をやめればそれ以上進行しませんが、やめられないと肝硬変や肝臓癌へ進行することもあります。
  • 非アルコール性の脂肪肝
  • 多くは、進行性のない脂肪肝(単純性脂肪肝)です。しかし、一部の脂肪肝は慢性肝炎から肝硬変、肝臓癌へ進行することがあります。これを非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)といい、成人の0.5~1%がかかっていると言われています。

「脂肪肝は、放っておいても大丈夫?」の答えですが、

脂肪肝の患者さんは、検診を受検した人の20~30%に上ると言われています。その多くは無害な単純性脂肪肝ですが、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である可能性もあり、完全に放置してはいけません。場合によっては肝生検(肝臓の組織を採取して顕微鏡で観察する)を行い、診断を確定させる必要があります。

Q6.肝炎を起こすウイルスについて教えてください

A型肝炎ウイルス

食物や水を介して感染します。ウイルスは不潔な飲み水にいるので、海外旅行では注意が必要です。カキなどの生の貝を食べて感染することもあります。

感染すると急性肝炎を起こします。まれに重症化し、死に至ることがありますが、慢性化することはありません。

ワクチンが開発されており予防可能ですので、東南アジアなどへの旅行の時は可能なら接種したほうがよいでしょう。

B型肝炎ウイルス

ウイルスは感染している人の血液にいるので、輸血や不潔な注射針の使用、性行為、お母さんからの出産時、などに感染がおこります。出産時に感染すると、子供は80~90%の確率でウイルスキャリアになり、その後慢性肝炎を発症する可能性があります。

成人は感染しても慢性化しないとされてきましたが、最近は性行為感染からの慢性化の例が増えています。

お母さんからの出産時の感染は、生まれた子どもにワクチン接種をするなどの対策が取られ、1986年以降にはほとんどなくなりました。

欧米から入ってきた新しいB型肝炎ウイルス(遺伝子型A)は、性行為感染により広がりつつあります。慢性化してしまうことがあり、今後問題となることが予想されます。

C型肝炎ウイルス

ウイルスは感染している人の血液にいるので、輸血や不潔な注射針の使用、性行為、お母さんからの出産時、などに感染がおこります。B型肝炎ウイルスよりは感染力が弱く、多くの感染は輸血によるものですが、現在では輸血でC型肝炎ウイルスに感染することはほとんどありません。感染すると、70%の確率で慢性化します。

E型肝炎ウイルス

野生のイノシシやニホンジカへの感染が確認されているほか、養豚場のブタにも感染しています。加熱不十分な豚肉(特にレバー)を食べての感染が報告されています。(市販の豚レバーの1.9%からウイルスが検出された)

感染すると急性肝炎を起こし、まれに重症化し死に至るケースもあります。慢性化することはありません。

北海道では他県に比べて非常に多い病気です。

EBウイルス・サイトメガロウイルス

若年者が感染すると、軽度の急性肝炎を起こします。自然治癒し、慢性化することはほとんどありません。リンパ節の腫れ、脾臓の腫れ、発疹、発熱などを同時にきたしますが、これらの症状も自然に治ります。感染しても無症状のまま治癒してしまうこともあります。

D型肝炎ウイルス

B型肝炎ウイルスに感染した人には、D型肝炎ウイルスが二重に感染することがあります。日本国内にはほとんどないウイルスです。

Q7.肝炎は治りますか?

ウイルス性肝炎のうち、A型肝炎とE型肝炎は治ります(重症化して死亡するまれな例を除く)。B型肝炎はキャリア化・慢性化してしまうと自然治癒することはかなりまれです。C型肝炎は慢性化してしまうと自然治癒はしません。慢性化したB型肝炎、C型肝炎は専門医による治療が必要です。

B型慢性肝炎の治療方法

実は完全に治すのは不可能に近い病気です。しかし、肝炎を鎮静化させて、病気が進行しないようにすることはできます。ウイルスの複製を妨げ、体内のウイルスを大幅に減らすことができる薬を一日一回服用します。服用をやめると効果はなくなり、ウイルスは再び増加します。服用の中断でウイルスの急増が起こり、肝炎が急に悪化して死亡した例がありますので、注意が必要です。

C型慢性肝炎の治療方法

自然治癒はほぼ起こり得ない病気ですが、治療すればウイルスを体内から完全に消し、治してしまうことが十分可能です。そのためにはインターフェロン治療が必須です。治せる確率は、患者さんの年齢・性別・肥満有無や、ウイルスの量や型によって大幅に異なります。

ここ20年くらいでC型慢性肝炎の治療は大きく進歩しました。1992年C型慢性肝炎に対するインターフェロン療法が保険適用となり、多くの患者さんに治療が行われましたが、期待したほど治癒する患者さんは多くありませんでした。その後、新しいインターフェロン製剤の発売や保険適応範囲の緩和などを経て、2004年ペグインターフェロンとリバビリンの併用療法が保険適応となり、治療成績は大きく向上しています。

ペグインターフェロン(週一回の注射)・リバビリン(毎日の飲み薬)療法により、C型肝炎ウイルス1型で50%前後、C型肝炎ウイルス2型で90%前後の患者さんが治癒に至ります(日本ではC型肝炎ウイルス1型の患者が7割)。以前に比べれば、治りやすい病気になってきています。治療の副作用はありますが、うまくいけば肝硬変や肝臓癌を発症することなく、普通の人と同じ寿命を全うできます。治療期間は病状によって異なりますが、大体24週~72週です。

これらの治療で治らなかった方でも、平成23年秋に認可予定の新しい治療法により、治癒が望めます。ペグインターフェロンとリバビリンに、さらに「蛋白分解酵素阻害薬」という飲み薬を併用することで、C型肝炎ウイルス1型で70%前後の治癒が期待できます。しかし、貧血や発疹などの副作用もまた強いといわれており、どなたにも施せる治療ではないようです。

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